縄文時代晩期の東北地方の亀ヶ岡文化(かめがおかぶんか)に伴う土偶は遮光器土偶(しゃこうきどぐう)と呼ばれ、一般によく知られている。その中でも教科書などに掲載されて最も著名な遮光器土偶が本例である。
頭には立ち上る煙のような冠状の突起がのせられ、大きくデフォルメされた目とは対照的に、小さく耳や鼻、そして口が表現される。両肩が張った太い胴部に短い手足が付き、突起を伴う隆帯が頸や胸飾りのように貼り付けられている。磨消縄文手法(すりけしじょうもんしゅほう)を用いて雲のような文様を後頭部や肩、そして胴部へと配置して装飾効果を高めている。赤彩が冠状の突起の一部に残ることから、本来は全面が赤く塗られていたと考えられる。
本例にみられる縄文人の卓越したデザインセンスと造形力は、いまもなお多くの人々に愛され、その一つの形として地元の駅舎のモニュメントとして採用されている。