中国・唐時代初期の文人、王勃(649-676)の詩文集。竜門(山西省)出身の王勃は官吏となって沛王(はいおう)に仕えたが、左遷され、旅の途中29歳で水死した。幼少のころから詩や文章に秀で、初唐の四傑に数えられる。
これは、現存最古の写本で、30巻のうち巻29の行状1首、祭文6首のうちの5首、および巻30の弔書祭文の類4首を収めている。書は細身の線で、字形は幅広く、重厚な趣がある。書風は前代の北朝風に近く、則天武后が制定した文字を用いていないことなどから、則天文字が作られた690年以前、王勃の没後10年余りのころの書写と考えられている。
紙背には『四分戒本略(しぶんかいほんりゃく)』など、平安時代末期の筆になる仏教の戒律が書写されている。奈良時代に唐から伝来し、奈良・興福寺に伝わったものとみられる。
画家、富岡鉄斎の旧蔵品である。