入峰斧は山伏が山林に入る時に、行路を切り開くのに用いる実用品であったが、後に形式化し儀式用具としても用いられた。この品は、中央部を細くした撥形の刃を柄に挿し通したものである。刃面は中央にハート形の透かしを開けて銅製の覆輪を嵌め、後ろ側の峰は三弁形に作り、面に同様の透かしを開けている。柄には銅板が螺旋状に巻き付けられている。修験道の行者である山伏は、各地の霊山など険しい山岳に入って修行するため、山野を跋渉するのにふさわしい各種の道具を携行していた。この斧は装飾を抑え、実用に徹した力強さが感じられる品である。滋賀・神照寺伝来とされる。