国宝浄名玄論 巻第四じょうみょうげんろん かんだい4

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  • 飛鳥時代・慶雲3年(706)
  • 京都国立博物館

 『浄名玄論』全8巻は、中国の三論宗の教学を大成した嘉祥大師吉蔵(549~623)が著した『維摩詰所説経』(姚秦時代の鳩摩羅什訳)の綱要書である。浄名とは、音写語である維摩詰(梵 Vimalakîrti)の漢訳であり、維摩詰という在家居士が活躍することで知られる『維摩詰所説経』は、中国や日本でもしばしば注釈が著され、在家仏教徒の間で支持された経典である。
 この写本は全体8巻のうち、巻第四の巻末には「慶雲参年十二月伍日記」、巻第六の巻末には「慶雲三年十二月八日記」という書写奥書があり、わが国の元号を用いて書写年代をあきらかにしたわが国最古の仏典であり、書跡でもある。慶雲3年は、飛鳥時代、西暦でいうと706年になる。ただし、全体8巻のうち、巻第一は平安時代、巻第二と巻第五は鎌倉時代の補写本であり、巻第七と巻第八を除いた他の3巻も巻首が補写されている。
慶雲3年の書写の際に使用された料紙には舶載と推定される上質な薄手の白麻紙が用いられ、本文は中国の六朝時代の趣をたたえた筆致で書写されている。1行の字数は、20字から40字前後であるが、このような経疏章(主に中国において著された注釈書や撰述書の類)は、1行17字詰という写経の定形や書体にこだわらずに自由な筆致で書写されることが多い。
 これら当初の料紙の紙継ぎ部分の上下には、界線を引く際の目安となるように針穴や小刀状の物で傷をつけた痕跡が見られ、そこに書写された本文には、平安時代初期と推定される白点が施されており、訓点本資料としても国語学上重要な資料となっている。
 これはもと東大寺に伝来したが、その後、神田喜一郎氏の手を経て国有に帰した。

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