重要文化財青磁茶碗 銘馬蝗絆せいじちゃわん めいばこうはん

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  • (指定名称)青磁茶碗(馬蝗絆)
  • 龍泉窯 (りゅうせんよう)
  • 1口
  • 高9.6 口径15.4 高台径4.5
  • 南宋時代・13世紀
  • 東京国立博物館
  • TG-2354

日本に伝えられた青磁茶碗のなかでも、姿、釉色が特に美しいばかりではなく、その伝来にまつわる逸話によって広く知られている作品である。江戸時代の儒学者、伊藤東涯によって享保12年(1727)に著された『馬蝗絆茶甌記』(ばこうはんさおうき)によると、この茶碗は安元初年(1175頃)に平重盛が浙江省杭州の育王山の黄金を喜捨した返礼として仏照禅師から贈られたものであり、その後室町時代に将軍足利義政(在位1449~73)が所持するところとなった。このとき、底にひび割れがあったため、これを中国に送ってこれに代わる茶碗を求めたところ、当時の中国にはこのような優れた青磁茶碗はすでになく、ひび割れを鎹(かすがい)で止めて日本に送り返してきた。あたかも大きな蝗(いなご)のように見える鎹が打たれたことによって、この茶碗の評価は一層高まり、馬蝗絆と名づけられた。
平重盛所持の伝承は、龍泉窯青磁の作風の変遷に照らして史実とは認めがたいものの、足利将軍家以降長く角倉家に伝えられていたことから、伝承には信憑性がある。内側に緞子(どんす)を張った中国製の漆塗りの曲げ物に入れられており、何らかの特別な事由で中国から運ばれた茶碗であることは確実である。

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