密教の修法などに用いられる梵音具の一種。五花形に成形した胴の周囲に、不動・降三世(ごうざんぜ)・大威徳(だいいとく)・軍荼利(ぐんだり)・烏芻沙摩(うすさま)という五大明王を浮彫風に鋳出している。各明王の姿態に変化を持たせながら、全体に動きのある画像構成としている。現在、把手の上部を欠失し、大部分が赤銅色の地肌を見せているが、当初は、上部に鈷(こ)を備え、まばゆい光を放つ鍍金がほどこされていた。
この種の鈴は、唐時代の密教法具の一典型とも言われているが、相当数ある現存作例が日本国内での伝世品に集中しており、また、材質・技法・文様といった要素には唐時代の器物と異質な点も認められ、制作地域や制作年代については、なお検討の余地が多い。
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