国宝地獄草紙じごくぞうし

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  • (指定名称)紙本著色地獄草紙
  • 1巻
  • 紙本着色
  • 26.9×249.3
  • 平安時代・12世紀
  • 東京国立博物館
  • A-10942

 天道(てんどう)、人道(じんどう)、修羅道(しゅらどう)、畜生道(ちくしょうどう)、餓鬼道(がきどう)と並ぶ六道(ろくどう)の一つ、地獄道を描いた絵巻。『正法念処経(しょうぼうねんじょきょう)』という経典にもとづき、八大地獄の一つである叫喚地獄(きょうかんじごく)(殺生、盗み、邪淫に加え飲酒にかかわる罪を犯した者が堕ちるところ)付属の別所(小地獄)が描かれている。髪火流(はつかる)、火末虫(かまつちゅう)、雲火霧(うんかむ)、剣林書(けんりんしょ)(詞書(ことばがき)では雨炎火石(うんえんかせき)に言及)の四段からなり、詞書には別所の名、現世での罪業、亡者の受ける責苦の様子が詳しく記されている。絵はいずれも墨と朱を基調とした二色が画面の大半を占め、少ない色数が地獄の凄惨さを映し出している。前半二図が亡者にクローズアップしているのに対し、後半二図は高い視点から亡者を見下ろすなど、画面の構図にも工夫がみられる。
 「餓鬼草紙(がきぞうし)」(No.8)などとともに後白河天皇(ごしらかわてんのう)の蓮華王院宝蔵(れんげおういんほうぞう)に納められていたと考えられるが、14世紀後半には西園寺(さいおんじ)家の管理下にあった可能性がある。その後江戸時代には岡山の安住院(あんじゅういん)に伝来し、昭和25年、東京国立博物館の収蔵品となった。

(土屋)
『国宝 東京国立博物館のすべて:東京国立博物館創立一五〇年記念 特別展』毎日新聞社他, 2022, p.277, no.7.

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