李迪は中国・南宋の宮廷に仕えた画家(画院画家)で、この時代を代表する1人。現存作品の年記や、やはり画院画家となった子の李徳茂の経歴などから、その活躍時期は南宋時代前半の12世紀後半と思われる。
李迪は花や鳥や動物を描くことを得意としたが、この芙蓉図は現存する李迪の最高傑作である。各図に押された「慶元丁巳歳李迪画」の落款から、南宋の慶元3年(1197)の作とわかる。
芙蓉は、初め白い花をつけ、しだいに紅色を帯びていく酔芙蓉とみられ、きわめて写実的であるが、繊細な筆と微妙な階調の色彩で描かれているため情趣にあふれ、余白を生かした空間も自然で静謐である。
2幅の図は、本来はそれぞれ独立した冊仕立の作品であったと思われるが、日本の茶の湯の美意識から生まれた唐絵鑑賞に合わせて、対幅に改装された。