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虚空蔵菩薩は、虚空のように広大無辺の福徳と智慧(ちえ)をもち、それを人びとに与え、願いをかなえるという。密教では、記憶力を得る求聞持法(ぐもんじほう)と福徳にあずかる虚空蔵法の本尊とされ、それぞれの修法で図像が異なるが、本図は後者の虚空蔵法の本尊として用いられた。月を表す大きな円光の中、蓮華の台座に坐り、右手を垂らして与願印をつくる。左手は胸の前に上げて、掌に宝珠を、頭上には五仏の宝冠を戴せている。
菩薩の肉身は白色で、輪郭をきわめて細い朱の線でくくり、淡い朱でぼかしを加える。着衣、台座、岩山や海は群青、緑青、黄土、朱墨などの渋い色調で彩色され、月輪、光背、天蓋、岩座には、細く金や銀の箔を切って貼った截金(きりかね)、銀泥が使用されている。これらは、抑揚の少ない線で描かれた伏目がちの表情とあいまって、画面には独特な渋みと幽玄の趣が漂っている。
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