南北朝時代は、戦乱の世相を反映して、武器・武具の装飾性がひじょうに高まった時代である。本品は、そのようなかざりを誇示した貴重な腰刀である。把は銅板に鍍銀を施し磨き上げた板金で包み、そこへ枝牡丹を透彫りにした銅板製鍍金の筒金をはめている。鞘は梅花皮鮫を着せ、上から黒漆を塗って研出したもので、鐺はやはり牡丹文を高彫りし鍍金を施している。鞘全体を包む梅花皮鮫は、南洋で産するエイもしくは蝶鮫の皮を用い、刀剣外装の部材の中でもすこぶる高価なものであった。中でも表面を研出すと梅花文様になる梅花皮鮫がもっとも珍重された。完好の南北朝時代合口式拵として貴重である。