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雲母で夾竹桃の文様を摺り出した優美な唐紙に『古今和歌集』巻第十二を書写する。巻頭から49首(132行)を収める。料紙の大きさはきわめて小さく、一紙の縦が16.7cm、横が26.6cm。文字も小さいが、運筆は巧みで筆線も弾力に富む。筆者は小野道風(894~966)と伝えるが、もとより伝承にとどまる。作成時期は、道風の時代より遅く平安時代後期にまで下がる。
同種の「古今和歌集」としては、巻第十と巻第十一、それに巻第十六から巻第十八の各巻の断簡・残巻の存在が確認されているが、本巻ほど保存状態のよいものはない。唐紙の種類は多様で、色は白、茶、縹(はなだ)、文様も雲鶴、相生唐草、花菱、蓮唐草、唐花草と変化に富む。作成当初はこれら各種の料紙が競うように連ねられていたわけであり、その華やかさは目をみはるものがあったに違いない。
なお、本阿弥切の呼称は、かつて本阿弥光悦(1558~1637)がこの「古今和歌集」を愛蔵していたことによる。江戸時代には、若狭の大名酒井家が所蔵するところとなっていた。
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