息災・増益・調伏・産生などを祈願する烏枢沙摩法の本尊となった画像。この明王は火頭金剛・穢積金剛などともいい、すべての穢悪を浄める力があるとされ る。台密では五大明王の一つであった。三目六臂の本像は、『別尊雑記』におさめられた智証大師請来様(円珍様)図像に一致し、やはり台密系と知られる。作 風は截金や彩色文様をほとんど用いず、装身具や持物などは裏箔を使用し落ち着いた効果をめざしている。こうした傾向は鎌倉時代前半の天台系仏画にまま見受 けられるもので、本像の制作年代も13世紀に置かれてよい。なお表装には鎌倉時代の彩色曼荼羅の一部と、南北朝時代の紫絹金泥種子曼荼羅が転用されている。