上杉家で「御重代三十五腰」と称された刀剣の1口で、武田信虎から上杉家へ贈られたと伝えられる。
刀身は、身幅が広く腰反りが深くつき、猪首鋒(いくびきっさき)となった豪壮な太刀姿を示している。地鉄(じがね)は板目肌に映りが立ち、刃文(はもん)は、下半は丁子刃(ちょうじば)を焼き、上半は出入りの少ない広直刃(すぐは)調のものとなり、足、葉(よう)が入っており、匂口(においくち)が締まりごころとなる。茎(なかご)には、「弘」と大振りな銘をきっている。弘は他に類品がなく不詳あるが、その作風から考えて、備前国一文字派の刀工と考えられる。
拵(こしらえ)は、反りが強い太刀を中身としたために全体は強く反っている。柄は熏韋(ふすべがわ)巻で御所車の目貫(めぬき)を据えている。鞘は黒漆塗とし、指し添えの笄は倶利伽羅龍、小柄は桐紋の高彫としている。上杉家伝来の拵は、鐔がつかず合口形式のものもあるが、これは素銅(すあか)に透彫を施したものがついている。