国宝牛皮華鬘ごひけまん

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  • (指定名称)牛皮華鬘 附 残欠 一括
  • 13面 附 残欠一括
  • 牛皮 彩色 截金
  • 平安時代・11世紀
  • 奈良国立博物館
  • 751(工154)

 華鬘(けまん)は古代インドにおいて貴人に捧げられた生花に起源があるといわれ、仏教に採り入れられて堂内の長押(なげし)にかけるなど荘厳具(しょうごんぐ)(仏教のかざり)として用いられるようになった。わが国では生花に代わり、牛皮(ごひ)製、金属製、木製、玉製、絹製などの華鬘代(けまんしろ)が用いられ、団扇形(うちわがた)といわれる横長の楕円形の作例が多い。
 この作品は団扇形の牛皮華鬘で、京都・東寺(教王護国寺)に伝来した。現在13面と残欠が残されているが、いずれも牛皮を透し彫りしたのちに漆を塗り、白土下地に彩絵(さいえ)(色彩による文様)を施している。13面の形式は次の二種に大別できる。ひとつは、生花に見立てた宝相華(ほうそうげ)を地文にして、向かい合う2羽の迦陵頻伽(かりょうびんが)(人頭の極楽の鳥)を表わしたもので、中央に生花を束ねた名残(なご)りである総角(あげまき)が表わされている。迦陵頻伽はそれぞれ仏菩薩を讃えるための散華(さんげ)用の花を盛った華籠(けこ)を捧げている。もうひとつは、総角を中心にして全面に宝相華唐草文を表わしたものである。
 13面の作風には差違があり、迦陵頻伽文、宝相華唐草文の華鬘ともそれぞれ少なくとも3~4種の作風が混在しているため、当初から一具であったとは考えがたい。そのうちもっとも作風の優れた「登号」「知号」では、迦陵頻伽の肉身に朱線を用い、着衣には細緻な截金(きりかね)(金箔を細く切り装飾に用いる技法)を用いるなど、本格的な平安仏画の技法がみられる。また宝相華唐草文の華鬘でも、繧繝彩色(うんげんさいしき)(似た色を隣り合わせる暈し技法)に截金を併用している。
 宝相華を地文にして迦陵頻伽を向かい合わせに配置した図様は、12世紀前半の制作と推定される岩手・中尊寺金色院(こんじきいん)の金銅透彫華鬘(こんどうすかしぼりけまん)にもみられるが、おおらかな気風を持つ本品はそれに先行する作例と考えられる。13面が東寺のいずれの堂宇で用いられたものか記録は残っていないが、制作時期は11世紀ころと考えられる。

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