迦楼羅はガルダというインドの聖なる鳥で、かの地ではヴィシュヌ神の乗り物とされる。それが仏教に取り入れられ守護神となった。本来は毒蛇を食べて退治するのだが、伎楽の中ではみみずをついばむ、やや滑稽な役を演じる。
本面は面裏に「上牛甘」か、とよめる墨書がある。正倉院伝来の面袋にも、同人の名前が記されており、本面も東大寺の大仏開眼会で用いられた仮面とみられる。上牛甘は上牛養とも書き、奈良時代中ごろに活躍した画工。東大寺大仏殿の天井の彩色にもたずさわったことでしられる。なお、大仏開眼会は仏誕会の四月八日ではなく、なぜかその翌日の九日に行われているが、巷説では雨天のため順延したと伝える。
本面裏には「綱封蔵/華厳□」という墨書もあり、大仏開眼会に用いられたあとは綱封蔵に移され、華厳会のための仮面として転用されたことがわかる。奈良時代の彩色彫刻は、彩色を施したあとに荏胡麻などの油を塗ったものがあることが、近年の科学調査の成果で指摘されている。本面も科学調査の結果、その可能性があることがわかっている。