京都高山寺に伝わる国宝鳥獣戯画は甲・乙・丙・丁の4つの巻で構成されている。この作品は絵巻から何らかの理由で切り離された断簡で、別に掛軸として仕立てられたもの。2017年に重要文化財に指定された。
この断簡には蛙や狐、猿といった動物が五匹、擬人化されて描かれている。笠や烏帽子を被り、高下駄を履いて歩く姿や、藤の花をささげ持つ様子などから、何かの行列の一場面であったのではないかと考えられている。 鳥獣戯画には物語を説明する文章がないため、どういう場面を描いたのかはわかっていない。しかし、画面左端、蛙が抱え持つ大きな蓮の葉の下あたりに、ひらひらと何かが舞っているのが注目される。甲巻には兎と蛙が相撲をしている有名な場面があるが、その右側には萩が描かれており、これはその萩の花びらであることが分かっている。このことからこの作品は、甲巻の一部だったと考えられる。