鏡背面の外区は菱雲文帯と画文帯で構成されており、内区は外側に半円方画帯を配し内側に獣と仏像を鋳出す。内区の仏像は、中国における初期仏教の貴重な図像資料である。現在、同文様の鏡が6面あるが、その中でも本例は鋳上がり保存状態ともに良い。文様や図像からみて、原鏡は4世紀頃に中国で製作されたと考えられる。しかし、日本出土品は、いずれも原鏡を粘土などに押しつけて鋳型を作り鋳造した踏返し鏡で、確認できる例は5~6世紀の古墳から出土しているので、その製作年代は5世紀以降に下ると考えられる。本例の出土地は明らかでないが、箱書に「河内国金剛輪寺」とあり、旧金剛輪寺の所在地である羽曳野市駒ヶ谷の古墳から出土したとみられている。日本における仏像表現をもつ初期の遺物として貴重である。