雪持ちの橘と菱形の花を組み合わせた、縦横約20cmの方形の文様を一単位とし、これを裂幅にふたつ並べ、上下で文様パターンを反転させながら織り上げた唐織が用いられている。唐織とは、綾地に多色の絵緯糸を浮かせて文様をあらわした一種の浮織物で、織物でありながら、あたかも刺繍のような質感がある。このように小さな文様単位を巧みに繰り返す唐織の構成や、身幅が広く袖幅が狭い小袖の形状は、いずれも桃山時代の特色を示す。桃山時代の唐織小袖の多くは能装束として伝えられるが、肖像画などの画中資料からは、高位の武家女性が正装の際に表着として着用したことが判明する。