笠・火袋を六角形とした大きな釣燈籠。火焔宝珠を頂いた笠は六方に降棟を設け、先端に花先形の蕨手を付けて宝珠を透かす。笠の縁には花先形の吹返しをめぐらす。火袋には七宝繋文・松皮菱文・亀甲文に、大日如来・阿弥陀如来・釈迦如来・不動明王などの種子を透かし、扉に金剛力士像をあらわす。正面右手下方に「白山中宮/元應元年/己未六月日/尾州玉井/大工貞澄」の透彫銘があって、作者と作期のほか、本品が白山への美濃側登拝口の中宮長瀧寺にあったことがわかる。鉄製釣燈籠は在銘最古級の作品として重要で、宗教的荘厳さの中にも装飾華やかな鎌倉後期の金工の雰囲気をよく伝えている。