片手におさまるほど、小ぶりの碗で、口縁の欠けた部分を見ると、釉は厚く、白磁の胎は極めて薄いことがわかる。このように鋭利な造形は、定窯の特徴であり、特に金彩が施されたこの作品は「金花定碗」と称された優品である。柿釉とは鉄釉の一種で、焼成時の化学的な変化によって、表面に柿色の皮膜が生じたものを指す。その上から牡丹と蝶の形の金彩を施している。また、この碗は高麗古墳の出土という伝承がある。宋代定窯のすぐれた作品のなかには、朝鮮半島へ伝わったものも多く、ごく一部日本にも将来されている。上流階層における高級な贈答品であったと考えられる。