唐三彩の代表作である。長卵形の胴と盤口を支える頸部、そして左右に付けられた龍耳によって、伸びやかで力強い姿が構成されている。龍耳瓶は西方起源の器形とされ、唐時代の異国趣味に適合して白磁や三彩でさかんにつかられた。胴の三方には型抜きでつくられた宝相華文(ほうそうげもん)の大ぶりのメダイオンが貼りつけられている。
施釉には唐時代に花開いた三彩の技法が駆使されている。龍首の部分や龍の背の突起などには意識的な釉薬の掛け分けがみられるが、胴の部分では鮮やかな緑色と褐色の釉が流れて入り混じり、蠟抜きとよばれる技法で白く抜いた白斑との対照が効果的である。西方起源の器形に龍という中国伝統の造形を組み合わせ、金工を思わせるメダイオンや染織品に通じる施釉法を総合させて、モニュメンタルな大作をつくりあげている。