魚々子タガネや特殊タガネを駆使した入念で多彩な施文など、童子形像の中ではかなり繊細な表現をみせる像であり、胴をやや細く絞り下肢を長めに表わす体軀にも微妙な抑揚がみられる。また、蓮肉上面には蓮子が表わされており、N-179などに比べても、よりこまやかな感覚を示している。
本体・台座を含む一鋳で造り、台座のみ内部を中空とし、それより上の本体部はムクである。本来は両肩下がりから別製の瓔珞が垂下していたとみられるが、現在は一部を残し、そのほとんどを欠失する。鬆は台座地付き等に一部認められるのみで、鋳上がりは極めて良好である。各装身具や裙、天衣の半截九曜文の連珠に魚々子タガネを使用し、裙と天衣の縁や衣文の稜、台座各部の縁にそれぞれ特殊タガネで複連点文を施す。ほぼ全面に鍍金が残り、彩色は頭髪に群青、唇に朱(あるいはベンガラか)、眉、目の輪郭、黒目、口ひげに墨描きが認められる。