蕨手状の文様で装飾される大ぶりの三面頭飾、連珠をあしらう胸飾りや瓔珞、二重に表わす瞼など、本像は7世紀後半に入って一般的となる特色を示している。しかし、端厳な顔立ちや体軀に対して大きめの両手、膝上でX状に交叉する天衣など、古様な要素も多分に残している。全体にまとまりのよい緊密な造形をみせ、タガネによる刻技にも入念なものがある。
本体・台座を含む一鋳で造り、両肩辺まで内部を中空とする。髻は元結紐の上縁で鎔銅が固まる時に生じるひけ割れによって分離したらしく、傭枘状に枘を入れて接合している。中空部を設けた個所の銅厚はやや薄手で、全体にほぼ均一である。小さな鬆が全体にみられるが、鋳上がりは良好である。各装身具の連珠には一部魚々子タガネを使用する。鍍金はほぼ全面に残り、台座内の地付き付近にも部分的に付着している。彩色は、頭髪に群青、唇や花形飾りの花弁の一部に朱(あるいはベンガラか)が塗布されている。