装飾性が調強された大ぶりの宝冠や瓔珞、眉間と鼻の境に段落をつけた顔立ち、僧祇支を着け、腹部から両脚間に垂れる衣を表わす着衣形式など、極めて個性的な作風を示す像である。ただし、重々しく垂れる瓔珞やその表情には、中国の隋から初唐にかけての仏像の影響も一応認められる。
本体・台座蓮肉を含むほぼ一鋳で造り、足首のやや上辺まで内部を中空とし、それより上の本体部はムクである。冠帯の左右垂下部(現在亡失)、瓔珞の体部から遊離する部分などは別鋳とする(ただし、右手から右膝上方の花形へ至る瓔珞は本体と同鋳か)。鬆は細かいものが全体にみられ、蓮肉背面の下縁部には鬆による大きな空洞ができている。宝冠の裏面や頭髪部を除くほぼ全面に鍍金が残り、彩色は、本体及び化仏の頭髪に群青、宝冠の裏面、垂髪の括り紐、唇に朱(あるいはベンガラか)、目の輪郭、黒目、口ひげに墨描きがそれぞれ認められる。なお、台座の反花以下は木造漆箔で江戸時代の後補である。