「辛亥年」の銘をもつN-165とほぼ同一の形式を示す像であるが、垂髪を蕨手状に表わし、鰭状の天衣が正面に向けて真直ぐに垂下し先端に反りをつけないなど、全体にN-165よりもむしろ古様な面もうかがえる。しかし、その一方で、丸く張った頬や愛らしい顔立ちには7世紀後半の童子形像と通じる面もあり、本像は、7世紀前半から後半にかけてのいわば過渡期に位置づけられるとも思われる。現在、台座は木製後補(蓮肉部と台脚部は別製で、蓮肉部のみ漆箔を施す)のものにかわっているが、本体の両足に台座固定用の枘が造り出されている点は留意される。
本体・両足下の枘を含む一鋳、ムクで造る。鬆は頭部、腰部、腹部等に大きめのものがみられる。像の表面は現在地金を露出した個所が多く、鍍金は天衣の先端等のごく一部に確認できるのみで、彩色も不明である。