縦長の金銅板製の坪を一連あたり8枚、蝶番(ちょうつがい)でつないだ幡である。第一坪上端を筒形に作り、垂下できるようにしている。『御宝物図絵』では、本作を「黄金御長幡」の幡足として描いた可能性があるが、N-58の灌頂幡とは別種の幡で、大きさが小さいことからこの名で呼ばれる。各坪はパルメット波状唐草文の縁取り内に、如来の立像や坐像、菩薩立像、天人、獅子などを透彫りで表し、部分的に朱・群青・緑青(ろくしょう)などで彩色を施して仕上げている。天人の姿態や唐草文の表現から、その制作は灌頂幡と同じ7世紀後半でもやや降った時期かとおもわれる。いま第2旒8坪目の大半の部分は、白鶴美術館に所蔵される。