中国鏡の文様とは異なる独自の文様をもった鏡の一つである。内区と外区を二重の圏線でわけ、圏線の両側と縁に重弧文を施している。内区には4人の人物と4頭の動物を描いている。動物は、尾をまいているが、枝角があるので鹿であろう。人物は手に壺、盾をもったものがおり、頭にまきひげ状のものをつけている。外区には10人の人物が描かれている。1人は頭を中心に向けて両手をあげているが、他の9人は縁と並行しており、片手に盾、片手に刀か剣を持っている。まきひげ状のものを頭や腰につけているものもある。また、人物像の間には、内区と外区を分ける圏線から放射状にまち針状のものが描かれている。これらの群像は狩猟の光景と考えられたところから「狩猟文鏡」と名づけられたが、祭りの舞踊とする説も有力である。同じ系譜に連なると考えられる鏡が、愛知県東之宮古墳、岐阜県宝珠古墳、奈良県天神山古墳などから出土している。人物や動物の表現には銅鐸、土器、埴輪などに描かれた絵画との類似が感じられ、古代日本の絵画資料として貴重である。