白茶地に古雅な桐竹模様を綾織りに表わすこの小袖は、石見益田家に伝来したもので、家伝によれば永正8年(1511)の山城国船岡山の合戦において功をたてた益田宗兼(?〜1544)が、十代将軍足利義稙(1466〜1523)より拝領したものとされる。裏に白平絹を用いた薄綿入りの袷仕立(あわせじたて)。
表地の桐竹模様は経の6枚綾地で表されるが、模様の構成配置は実に巧みで、向きの各々異なる桐と竹の単位模様を上から下へと交互に配して、整然とした秩序の中に快い変化を与えている。上品さと風格の上に瑞々しさもそなえた作品であり、将軍よりの拝領品という伝承が十分うなずかれる1領である。