フリーハンドもしくは模様を透かし彫りした型紙を用いて生地に糊を置き、その上に金や銀の箔を貼り付け、その後に余分な箔を羽箒などで払い落として模様を表わす技法を「摺箔」と呼ぶ。一般的には単純な単位模様を反復して表わす場合が多いが、この作品においては何種類もの型が巧みに使い分けられている。とりわけ葡萄の蔓はいずれも自由かつ伸びやかに表わされており、この部分は型を使用せず直接糊を置いた可能性もある。
能の子方の装束ながら、技術が秀逸であることに加えて意匠が格調高く優雅であることから、現存する摺箔の作品中、最高位に位置付けることができる一領である。