礼盤は、仏前において僧侶が坐る方形の高座で、禅宗や時宗などの一部を除いた各宗派で使用される。通常はこの上に半畳と呼ぶ畳を敷き、その前に経机を、右に磬、左に香炉などをのせる脇机を置く。
この礼盤は、方形入隅の甲板の下に、持ち送りを付けた猫脚を備える。礼盤には箱形のものと猫脚をつけたものがあるが、猫脚を付けた礼盤としては最も古い遺例の一つである。
甲板の上面縁と側面には、錫粉の蒔絵で竜胆円文が表わされている。錫粉蒔絵の遺品は多くはないが、平安時代の記録類には「白鑞蒔絵」として散見され、古くはよく用いられた技法であったと考えられている。
また甲板側面の入隅部には魚々子地に竜胆円文を線刻した八双金具をつけ、持ち送りには覆輪を廻らし、脚先には沓金具を履かせるなど、重厚な装いである。