黒漆塗の地に1茎の葦穂をくっきりと描いた印象的なデザインの鞍。同様の意匠で飾られた舌長鐙が1双、ともに伝わっている。
文様は、金の高蒔絵に金貝を交えて描かれており、芦の葉にかかる露は銀鋲を打って表わす。また、鞍の周縁や居木の先端には金の覆輪を廻らしている。
鞍の変則的な画面をみごとに使いきった大胆な文様構成と、金銀を多用した豪華な装飾に桃山という時代の新しい気風がよく表われた作品である。
なお、この鞍には狩野永徳筆と伝えられる下絵が附属しており、そこに「天正五年(一五七七)正月中ニ 吉秀」(花押)の添え書きがある。