行平は、平安時代末期から鎌倉時代前期の豊後国の刀工で、元久二年(1205)の銘をきった作品が残っている。この頃、後鳥羽上皇は全国の刀工を京都に集め作刀させたと伝えられており、行平もこれに選ばれた鍛冶のひとりと言われている。
この太刀は、細身で腰反りの高い古雅な姿を示し、刃文(はもん)は、直刃(すぐは)を基調にして小乱(こみだれ)の刃が交じり素朴である。佩表(はきおもて)の鎬地には梵字と人物の形をした彫物(ほりもの)が見られるが、行平は、反りのある湾刀(わんとう)で刀身彫刻を行った刀工としては最も古い。梵字は毘沙門天を意味していると考えられる。人物の彫物は、地蔵菩薩、不動明王、役行者(えんのぎょうじゃ)など諸説ある。