涅槃図は、釈迦が沙羅双樹の林で肉体的な面での死を迎えた情景を描いたもの。忌日にあたる2月15日に、釈迦の遺徳を追慕し、報恩するために行われる涅槃会の本尊として使用され、多くの画像が制作された。本図は平安時代涅槃図の代表的作例の一つで、品格のある人物表現や優美な彩色で知られる優品である。視点を釈迦の足側やや上方にとり、横長の大画面の中央に釈迦を大きく描き、その周囲に弟子や諸菩薩、天部、鳥獣類も大きめに描いて、涅槃の情景にクローズアップするような画面構成を特徴としている。こうした画面構成は平安時代の涅槃図の特徴の一つである。