寒山と拾得は、天台山国清寺に住み、豊干(ぶかん)禅師に師事したといわれる唐代の伝説上の人物。寒山拾得の絵は、宋代以降、禅僧たちの間で好まれた。「禅機図」とは、禅宗にかかわる逸話を主題としたもの。
本図は、豊干禅師はいずこに、と尋ねられて無言のまま答えず、大笑する寒山と拾得を描く。顔を細緻に、衣服を粗い筆で表現する水墨人物画の伝統に従った手法をとるが、さらに因陀羅独自のものに簡略化されている。
因陀羅の絵は日本では非常に珍重された。本図は付属の箱に、茶人として有名な松江藩主、松平不昧(まつだいらふまい)の箱書をもち、浅野家に旧蔵された名品として知られる。