「法隆寺献納宝物」中の2面の鏡。ともに光明皇后が、天平8年(736)2月22日の聖徳太子の忌日に法隆寺に奉納したものである。白銅(はくどう)で鋳造した大型鏡。白銅は青銅より錫を多く含み、より硬く白い。2面ともγ線(ガンマせん)透視写真によって、非常に溶かした金属の流れのよい、優れた鋳造であることが確かめられた。
2面の鏡の径はわずかに異なるが、鏡背の文様は、鈕(ちゅう つまみ)周辺の波紋の有無を除いて両者酷似しており、四方に配した山岳には樹林、岩に坐る人物、獅子と鹿、鳥を、波間には舟上の釣り人などを表した中国風のものである。
しかし両者が同じ鋳型で造られたか、別々の鋳型であったかには議論があって決定していない。また、製作地についても日本で中国の鏡を手本に鋳造した倣製鏡(ぼうせいきょう)の一種とする考えもある。