国宝円珍関係文書えんちんかんけいもんじょ

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  • (指定名称)円珍関係文書
  • 8巻
  • 紙本墨書
  • 平安時代・9世紀
  • 東京国立博物館
  • B-2405

 「円珍関係文書」は、平安時代前期に中国の唐へ渡った天台宗(てんだいしゅう)の僧、智証大師(ちしょうだいし)円珍(814~891)が残した文書類で、円珍の出自や僧侶の身分に関する文書、自筆の書状、入唐求法(にっとうぐほう)に際して発行された日唐の公文書などからなる。
 このうち「充内供奉治部省牒(ないぐぶにあてるじぶしょうちょう)」は、宮中で天皇を護持する内供奉持念禅師(じねんぜんじ)という僧官に円珍を任命する内容である。付属する円珍自筆の添状(そえじょう)によると、本来は内供奉の任命に際して発行されない「牒」という様式の公文書を、右大臣藤原良房(ふじわらのよしふさ)(804~872)の特別な計らいにより作成してもらったという。円珍はこれを、自身の肩書きを証明する重要書類として入唐求法の旅に携行した。
 853年に入唐した円珍に対し、唐の地方官が与えた通行許可証が「台州温州公験(たいしゅうおんしゅうくげん)」である。冒頭の一通(二紙)は大中(だいちゅう)7年12月3日付で台州の役所から発行された「牒」であるが、これに続き、円珍が同年10月から11月にかけて訪れた温州の横陽県・安固県・永嘉県、台州の黄巌県・臨海県の「公験」5通が貼り継がれている。唐から持ち帰ったこれらの文書は、円珍を祖とする天台宗寺門派(じもんは)の総本山、園城寺(おんじょうじ)(三井寺(みいでら))に伝来した。園城寺には現在も円珍ゆかりの貴重な史料(国宝「智証大師関係文書典籍(てんせき)」)が伝わるが、その一部が明治時代に園城寺別当(べっとう)となった北白川宮(きたしらかわのみや)家に渡り、昭和23年に当館の収蔵品となった。

(樋笠)
『国宝 東京国立博物館のすべて:東京国立博物館創立一五〇年記念 特別展』毎日新聞社他, 2022, p.283, no.24.

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