前漢の司馬遷が著した『史記』は、黄帝から前漢の武帝にいたる歴史を、紀伝体でまとめた中国最初の正史として知られている。この書巻は、『史記』を唐時代に書写したもので、巻第二十九、河渠書第七の後半にあたる残巻である。本来巻子装であったが、現在は折本装に改められている。第一紙は1行のみを存し、第二紙は25行、第三紙は24行、第四紙は巻末にあたり、本文13行を収め、1行を空けて尾題「河渠書第七」「史記廾九」を入れている。界線を施し、1行あたり17字前後、集解の注は双行に書写している。文字に欠筆はなく、現行本の内容を正す箇所もあり、唐時代における『史記』の古い形態を伝える貴重な資料ということができる。
尾題の下と紙縫の紙背には、「藤」朱文方印があり、尾題の下と紙背の紙縫一箇所に草名が記されている。『経籍訪古誌』に掲載され、『容安軒旧書四種』に影印された。
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