伏見天皇(1265~1317)の御製集の断簡、すなわち広沢切の一つと目されるもの。四季ならびに恋・雑あわせて100首を一巻としていたと思われるが、現在は55首を存する。料紙には文書の反故を用い、そこかしこに推敲の跡がみえ、これが草稿たることを物語る。ただし、55首のなかには、天皇に近侍した西園寺実兼の家集にみえるものがある。あわせて、筆致とともに天地に墨界がある点は、藻塩草(国宝、京都国立博物館蔵)に貼りこまれた実兼の百首和歌の断簡・野宮切に酷似し、本巻は実兼の詠草という可能性が高まってくる。
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