伏見天皇(1265~1317)による御製集の断簡、「広沢切」の一つで、春部66首、秋部8首の計74首を存する。数箇所に天皇による推敲や抹消、歌頭には部類のための注記がみえるため、草稿本たることは疑いない。1首のみ「玉葉」という集付がみえ、これは天皇が京極為兼に下命して撰進させた『玉葉和歌集』をさす。
全8紙からなるが、5箇所にわたり切断した痕があり、紙背文書の類型より、この一巻はある時期、三つの異なる「広沢切」をあわせて巻子に仕立てたと思われる。かつて折本であったことを物語る折り目の間隔が一定していない点も、さきの推測を裏付ける証左となろう。こうした切り継ぎの問題にくわえ、ほかの「広沢切」と重複する歌が10数首ふくまれるなど、その成立過程を考えるうえで重要な一巻となっている。阿波徳島藩主・蜂須賀家の旧蔵品。
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