ほぼ前半を欠いているが、末尾に「第八巻」の巻数表示と「大光儀品第十一」の品名があることから、現行本の『大智度論』(姚秦鳩摩羅什訳)巻第八の後半部分に該当していることがわかる。また品名については、現行本は「放光之余」となっているが、石山寺本は「大光品」となっていることが知られている。隷意を含んだ字すがたや天地の余白の小ささ、一行の字数が十八、九前後であることなどが五世紀前半の書写であることを物語っている。軸付部分の紙背には、中央アジアを中心に国際的な商業活動を行っていたソグド人が用いていたソグド文字が記されていることでも貴重な写本となっている。