重要文化財蓮池白鷺図れんちはくろず

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  • 2幅
  • 絹本墨画
  • (各)縦104.8cm 横55.1cm
  • 元時代・14世紀
  • 京都国立博物館
  • A甲547

 咲き誇る蓮花の下で獲物を狙う白鷺を描いた対幅。中国語で「蓮」は「連」(“lian”)と、「鷺」は「路」(“lu”)と同じ発音で、難関の官吏登用試験である科挙に一族が続けて合格できるという「一路連科」の願いを込めた蓮と鷺の吉祥画が数多く制作された。
こうした蓮池水禽図は中国の江南地方での伝統的な画題であり、宋時代後半には主題や構図ともに定型化していった。水墨のみで輪郭線を施さない没骨法で画く本図もたしかに類型的ではある。しかし、蓮葉の先には蜻蛉が添えられ、水中には小魚のほかに小蝦も描かれており、同じく江南地方で流行した藻魚図や草虫図の要素が随所に加えられている。さらに右幅では開花した蓮花が左幅では枯れ落ちたり花托をみせていたりして、両幅の間に時間的な経過を暗示している。鑑賞者の興味を惹きつける表現の細やかさが本図の特徴である。

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