蔡山は室町時代の『君台観左右帳記』に元時代の人と記録されるが詳細は不明である。本図は杖を肩にもたせ岩に坐る羅漢を描いているが、羅漢の坐る岩の中に「蔡山」の隠し落款がある。本来は十六羅漢図セットの中の一幅と思われ、同趣の羅漢が他に一幅現存している。老いて痩せた羅漢の表現には蔡山固有の画風をみることができ、そこには同時代の顔輝派と共通するような怪異な雰囲気が漂っている。画面右下隅に足利義直の「奉三宝弟子右兵衛督源直義捨入」という寄進銘があり、足利直義が貞和2年(1346)に高野山金剛三昧院に寄進したものといわれる。
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