蕪形をした胴、上方にかけてラッパ状に広がる細長い頸、裾広がりの高台といった各部からなる。全体は1回の鋳造で形作られているが、高台の底面のみ別に接合されている。
この種の金属製の水瓶は、仏教文化圏の各地で類例が見受けられるものの、本器のように、表面に細緻な文様が線刻された作例は類を見ず、きわめて珍しい。頸に、葡萄唐草をはじめ、蓮弁・輪繋・羽状の文様、胴に2頭の絡み合う龍、高台に連珠・蓮弁といった文様が見える。文様の形態や表現法、さらに製作技法などの特徴を勘案すると、日本国内で制作されたと考えるのが穏当であろう。
所々に黄金色に輝く地金が露出し、金にも見まがうような、当初のまばゆい色調がしのばれる。