ターバンのように束ねた髪、正面にだけつける髪留め風の頭飾、裾をたくし上げる裙などに、インド的な風俗を思わせる像である。その顔立ちや姿勢、天衣や裙のつけ方、先端に稜をたてる台座蓮弁の形などは、法隆寺に伝来した押出仏中、阿弥陀三尊及び比丘形像(例えばN-198)の脇侍菩薩像と共通するものが認められる。
本体と台座は各別鋳とする。本体部は両足下にそれぞれ造り出した足枘を含む一鋳で造り、頭部から裙裾まで内部を中空とし、裙裾底面の両足間が外部へ開口する。銅厚は薄手で全体にほぼ均一である。像内には頭頂から腹部辺まで鉄心が残存する。腹部と背面腰帯の各中央に方形の型持を設けている。背面腰部下方の2個所に嵌金があり、また現在欠失するが、左手第5指先も別製のものを象嵌していたとみられる。台座も全容を一鋳で造り、蓮肉上面に本体部両足下の枘を受ける枘穴と光背支柱用の枘穴を設ける。鬆は本体、台座も全体にみられるが、特に本体の頭頂部、脚部の下半等に多い。鍍金も両者ともに良く残るが、彩色は本体部のみで、頭髪に群青、唇に朱(あるいはベンガラか)、眉、口ひげ、目と唇の輪郭に墨描きが認められる。