幅の広い顔立ち、周囲に蕨手をあしらった頭飾やX状に懸かる瓔珞の形式、左手の第1指と3指で宝珠をつまみ、右手で水瓶を握って立つ姿勢など、法隆寺観音菩薩立像(伝金堂阿弥陀如来右脇侍)と強い共通性を示している。また、N-163、N-164とは顔立ちが類似するが、いずれも体内に太い鉄心を残している点、技法的にも共通する。
本体・台座を含む一鋳で造り、頭部まで内部を中空とするが、現在裙裾の近くまで中型土が詰まっている。また、像内には頭部から裙裾辺まで鉄心(断面は方形)が残存する。銅厚は頭部全面が厚手である他は、比較的薄手で全体にほぼ均一である。台座背面中央やや左寄りの仰蓮から反花にかけてと同丸框の右方部を鋳懸けるが、一部の個所(背面仰蓮部)を除いては表面の鋳損じに対して行なわれたものとみられ、同内部には各所に円形の突起が出ている。これは、鋳懸け部にあらかじめ丸穴を穿ち、この穴を通して鎔銅を内部まで流し込むことによって表面部の鋳懸けをより緊密なものとするための処理と考えられる。鬆は特に頸部以下に目立つ。右手の甲や左手の肘部に嵌金を施している。後頭部を除くほぼ全面に鍍金が残り、彩色は頭髪に群青、目の輪郭、黒目の一部に墨描きが認められる。