欅材の挽物造りになり、腰部の円筒形に左右の半球状部を接着している。口縁と半球状の中央に二重、腰部中央に三重の節を造り出し、中央の腰部には複弁蓮弁文を、他の部分には唐花唐草文をそれぞれ繧繝彩色によって描く。現在彩色は剥落が甚だしいが、なお華やかな面影が偲ばれる。また左右の口縁の区画内には、各1個の金銅四葉座(但1個欠)に釣鐶をつけた鐶金具を打っている。なお半球状内面の海に、「鵤東院三」の墨書銘がみられる。
細腰鼓(さいようこ)には形の大小によって、一・二・三・四鼓の各種があり、墨書の「鵤東院三」は三鼓(さんのづつみ)を意味するものであろう。N-109黒漆鼓胴にも「法隆寺聖霊会■三鼓也云々」の墨書銘があり、その寸法もおおむね同様であって、ともに三鼓を示すものとされる。また正倉院にも磁鼓胴と呼ばれる細腰鼓があるが、木製彩色になるものはみられない。奈良朝の楽器を考察する上で、きわめて貴重な資料である。