糞掃衣とは、不要になったぼろ裂を洗い清め、重ね合わせて縫い綴った袈裟のことである。さまざまな色と不定型な形の麻布を重ね合わせ、細かく刺し縫いし、四周に紺色の麻布の縁(ふち)をめぐらしているが、現在は多くが欠失する。しかし、縁が一部遺っていることで、当初の糞掃衣の形状を知ることができる点、貴重な作品といえる。N-33にみられる絹製の「糞掃衣」とは異なり、全体に色あせた色調といい、麻という質素な素材から、いかにも使い古して廃棄されたぼろ裂を集めたようで、糞掃衣としての本義を示しているようにみえる。この糞掃衣を収めていた箱には、「聖徳太子糞掃衣」と墨書されている。