出土した古墳の状況は未詳である。方形の椅子に座り、両手を前に下げ、椅子から突出した板の上に小さい足が乗せられている。やや高い椅子台部の形状から古墳時代後期、すなわち6世紀前半ころのものと思われる。袈裟状衣と呼ばれる女子像特有の着衣表現をもち、襷を掛け、腰には三角文をあしらった幅広の帯をつける。額には櫛を挿し、耳環、二重にまかれた首飾り、手玉、二重にまかれた足玉を装着する。左腰には五鈴鏡と三角文を配した袋を下げている。椅座、胡座、正座などの表現をもつ人物埴輪は、通常男女が組になって群像の中の場面を構成していることから、本例も対になる男子像があったと思われる。形象埴輪の場面構成のなかでは中心となる人物像であろう。