本書は院政期の天皇である高倉天皇(1161-81)の厳島神社御幸を、近臣の源通親(1149-1202)がかなで記した紀行文である。もと金沢文庫に伝来したもので、「高倉院昇霞記」を合綴する、鎌倉時代中期の書写とおもわれる写本である。
天皇の御幸は、治承4年 (1180) 3月19日に発し、陸路・海路を乗り継いで4月9日帰京するもので、後に『平家物語』の 「厳島御幸」の素材ともなった。
作者の源通親は、高倉天皇の近臣として仕えたが、平家没落のあとは後鳥羽天皇の乳父として頭角を現し、後鳥羽天皇の皇子が皇位につき土御門天皇となると内大臣に就いた。歌人としても知られる。
1938.07.04(昭和13.07.04)指定。
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