伏見天皇(1265-1317)は、後深草天皇の第2皇子で第92代の天皇。鎌倉時代中期の能書として、その名が高かった。漢字・かなともに巧みで、多くの遺品が確認されている。また天皇は和歌をたいへん好み、京極為兼に命じて第14番目の勅撰集『玉葉和歌集』を撰進させた。総歌数2800余首は二十一代集の中で最大である。
伏見天皇の御製は『新後撰和歌集』以下の勅撰集に294首を数えるが、この1巻は、「むら雨の」以下「うきみにも」まで夏部30首、恋部10首、雑部10首の計50首の和歌が書写される。流麗な書で、歴代屈指の能書として知られる天皇の書風を伝えるものである。